辞世の句
死を間近にして、人が書き残した短い詩。
中世以降の日本で多く詠まれた辞世の句を集めています。
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生くべくも思ほえぬかな別れにし人の心ぞ命なりける
和泉式部 平安
もう生きていられそうにない。別れたあの人の心こそが、私の命だったのだ。
一
後の世もまた後の世もめぐりあへ染む紫の雲の上まで
源義経 一一八九
後の世も、そのまた後の世も、めぐり逢おう。紫の雲たなびく浄土の上まで。
二
願わくは花の下にて春死なむその如月の望月のころ
西行 一一九〇
願うことなら、桜の花の下で春に死にたい。釈迦が入滅したという、如月の望月のころに。
三
何事も夢まぼろしと思い知る身には憂いも喜びもなし
足利義政 一四九〇
何もかもが夢まぼろしだったと思い知った身には、憂いも喜びもない。
四
極楽も地獄も先は有明の月の心に懸かる雲なし
上杉謙信 一五七八
極楽か地獄か、行く先は分からない。だが我が心は有明の月のように、かかる雲ひとつない。
五
夏の夜の夢路はかなき後の名を雲居にあげよ山ほととぎす
柴田勝家 一五八三
夏の夜の夢のようにはかない一生だった。せめてこの名を、雲の上まで高くあげてくれ、山ほととぎすよ。
六
露と落ち露と消えにし我が身かな浪速のことは夢のまた夢
豊臣秀吉 一五九八
露のように生まれ、露のように消えていく我が身よ。浪速でのことは、夢のまた夢だ。
七
散りぬべき時知りてこそ世の中の花も花なれ人も人なれ
細川ガラシャ 一六〇〇
散るべき時を知って散るからこそ、世の花も花であり、人も人なのだ。
八
曇りなき心の月を先だてて浮世の闇を照してぞ行く
伊達政宗 一六三六
曇りのない心の月を先に立てて、浮世の闇を照らしながら行く。
九
白梅に明くる夜ばかりとなりにけり
与謝蕪村 一七八四
冬が終わり、ほころぶ白梅が闇からうっすらと見えてくる、そんな夜明けを迎える季節となった。
一〇
耳をそこね足もくぢけて諸共に世に古机汝も老いたり
山東京伝 一八一六
耳は遠くなり、足もくじけて、お前も私と一緒にすっかり老いたな、古机よ。
一一
うらを見せおもてを見せて散るもみじ
良寛 一八三一
一二
この世をばどりゃお暇に線香の煙とともに灰さようなら
十返舎一九 一八三一
この世からは、どりゃ、お暇(いとま)。線香の煙とともに、灰(はい)、さようなら。
一三
東路へ筆を残して旅のそら西のみ国の名どころを見む
歌川広重 一八五八
東国に絵筆を残して、旅の空へ。西方浄土の名所を見てこよう。
一四
身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留め置かまし大和魂
吉田松陰 一八五九
この身はたとえ武蔵の野に朽ちようとも、大和魂だけはこの世に留めておきたい。
一五