高杉晋作
おもしろきこともなき世をおもしろく住みなすものは心なりけり
もともと面白くもないこの世を面白く生きられるかどうかは、自分の心持ち次第だ。
概要
高杉晋作(1839-1867)は、幕末の長州藩(現在の山口県)の志士で、明治維新に大きな影響を与えた人物の一人です。長州藩士の家に生まれ、吉田松陰の松下村塾で学び、学問を深めるようになります。加えて、上海への渡航の機会を得た高杉は、その悲惨な実状を目の当たりにしたことで西洋への危機感を強めます。
その後は、奇兵隊を創設し、武士に限らず幅広い層から兵を募る新しい軍隊を作ったり、長州が欧米との戦争になった際には講和を結ぶ役を任されるなど、重要な役回りを担いました。また、このままでは日本が欧米列強に侵略されるとして、高杉晋作は、倒幕勢力の急先鋒となります。
しかし、1867年、30歳を手前にして、肺結核によって死去。短い生涯ながら、幕末の流れを大きく変えた重要な人物とされています。
その高杉晋作の辞世の句として伝わっている歌が、「おもしろきこともなき世をおもしろく住みなすものは心なりけり」です。もともと面白くもないこの世を、面白いものにするのは、自分の心持ちである、という意味合いの力強い歌で、「おもしろきこともなき世におもしろく──」という風に、「に」になっている場合もあります。
高杉が詠んだのは和歌全体ではなく、「おもしろきこともなき世をおもしろく」という上の句の部分で、下の句の「住みなすものは心なりけり」は、幕末の女流歌人で高杉と交流があった野村望東尼の作であり、この歌は合作だという声もあります。
また、これは死の一年ほど前の作で、辞世の句とは言えないのではないかという指摘もありますが、高杉晋作の人生などとも重ね合わせ、この歌が辞世の句として広く伝わっているようです。